トランススタンス

 

トランススタンスとは

 

トランスとはこの場合、違和感を覚える精神状態をいいます。 スタンスとは、「態度」や「立場」という意味を持つ言葉です。トランススタンスとは、現在の自分の立場と自認する立場に差があり、違和感を感じている精神状態のことです。自認する立場とは、本人にとって、本来こうであるはずと思っている自分の立場のことです。それは、自分の将来の理想像というものではなく、本来の私はこうなんだという自覚を持っていることです。

 

 

トランススタンスの性格傾向

 

例えば、自分が一番でないと気が済まない性格の人がいます。ただ負けず嫌いだから一番になりたいという性格の人もいます。ですが、ここで説明する性格は、ただ負けず嫌いなだけではありません。育った家庭環境は関係なく、生まれつきの親分肌です。強い支配欲があり、人に支配されるのを嫌うので、自分が支配する側になりたいと思います。その為、生活圏の中で自分がトップにいる立場、言い換えるなら、ピラミッドの頂点にいないとしっくりせず、ストレスを感じます。歴史上の有名人では、織田信長がこの性格に当てはまります。

このタイプの人は、属している組織の中で、たとえ早く出世して幹部になれたとしても、トップになれる見込みがなければ、独立したいと思います。独立したとしたら、その分野でいつかは日本一になりたいと思いますし、日本一になれたら、今度は世界一になりたいと本気で思います。まるで強迫観念のように、自分が一番にならないと我慢出来ません。現状に満足出来れば問題無いのですが、諦めない闘争心を持っている性格なので、それがなかなか出来ません。このような性格の人は、生きている間に一番にならなければという焦りから、一部の人は無茶な投資をしたり、違法なことに手を染めてしまうしてしまう場合もあります。

立場は、周りの人や社会の中での関係性によって成り立ちます。つまり立場とは、社会性のある言葉で、自分一人で完結するものではありません。トランススタンスで感じたストレスを解消する為に、他の人の立場に自分の立場を重ねることがあります。

例えば、自分が一番でないと気が済まない性格の人が、目指す分野で一番になれなかったとします。その場合は、自分の子供や教え子に自分の後を継がせるかのように、その人が自分の代わりに一番になれるように教育することがあります。そうすることで、自分が一番になれなかった無念を晴らそうとします。もし一番になれたら、これは教えた本人にとっては、自分の力によって他の人を一番にしてあげたことになるので、間接的に自分が一番になったという感覚になります。しかし、もし自分の子供や教え子に選ぶ権利を与えず、半ば強制的に従わせているのであれば、その動機は愛情だけではなく、自分が一番であることを実感する為に、周りの人も巻き込んでしまっていることになります。

上述した性格はトランススタンスの一例ですが、ちなみにこの性格は、顕示性気質と言います。詳しくは、体型別性格類型の項目の中にある大人型のページをご覧下さい。
他にも、別のタイプのトランススタンスもあります。詳しくは、インポスター症候群の項目をご覧下さい。

 

 

トランススタンスとは思われないケース

 

厳密には、トランススタンスで言うところの立場とは、自分の“立ち位置”のことです。立ち位置という表現よりも、立場という表現の方が一般的なので、立場という言葉で説明していたにすぎません。

 

トランススタンスは、現在の自分の立場が、自分が考えている本来の立場より、高い位置か低い位置かということが重要です。例えば、『自分は本来偉大な人間のはずなのに、一番になってない現在の立場には違和感を感じる。』とか、インポスター症候群のように、『自分には実力があまりないのに、他の人より出世している現在の立場は違和感を感じる。』というような違和感です。

 

現在の自分の立場が、自分が考えている本来の立場より、高い位置か低い位置かということを伴わない違和感であれば、それはトランススタンスに含まれません。例えば、『自分は内向的な性格なのに、営業職をやらされているのは違和感を感じる。』というような場合は、自分に与えられた役割が、自分の性格に合っていないことによる違和感です。