権威主義的な気質に関連する分類

 

 

ここでは、権威主義的な観点で分類した気質の説明をしています。権威主義は簡単に言えば、権威に執着する価値観のことです。気質とは、性格の基盤となる先天的な心理傾向です。性格が形成される要因は、育った環境や社会生活などの体験による後天的な影響の他に、気質による先天的な要素もあります。その為、権威主義的な性格となる原因は、気質によるところもあります。

 

気質については、私の研究による体型別に分類した気質で説明されています。体型と気質の関連性に関しては、詳しくは体型別性格類型の項目をご覧下さい。

権威主義的、階級権主義的、反権威主義的、非権威主義的、博愛主義的、全体主義的、世間主義的な精神性に関しては、詳しくは権威に関連する性格の項目をご覧下さい。

 

 

権威主義的気質

 

従来の心理学では権威主義的性格を、支配することを好むサディズム的傾向、服従することを好むマゾヒズム的傾向、支配と服従の志向性を併せ持つサドマゾヒズム的傾向のタイプに分ける解釈もあります。権威主義的性格を気質として分類した場合でも、支配や服従、その両方の志向性を持つタイプも存在します。

 

大人型の性格である顕示性気質には、人を組織的に支配したいという願望があり、支配的な権威主義的気質です。負けず嫌いな性格なので、自分が一番でないと気が済まないところがあります。親分肌で指導力があり、リーダー的存在になりたがります。自尊心が強いので、権威を振りかざすことはあっても、人や組織に服従することは基本的には好みません。しかし、自分の権威を示す為に有名な組織に属したり、有名な人物に師事したりすることはあります。

顕示性気質の発言には、社会的に名声のある組織や団体や人物の名称が頻繁に出てきます。話の内容は、自慢や批判や知識やユーモアなど様々ですが、権威のある名称を話の中に出すことで、その名称の知名度を借りて間接的に自分の存在感を示し、自己主張しています。

 

小太り型の性格である内顕性気質には、支配的な部分も少しありますが、権威に服従する傾向が強い権威主義的気質です。その為、長いものに巻かれます。恐れて嫌々ながら従うというのではなく、権威のある人物には畏敬の念をもって従います。立場が上の人には、たとえ権威が感じられない人物であっても、陰口を言いながらでも一応は従います。

自分より弱いと思う者に対しては、相手を見下して強い態度をとることもあります。しかし気が小さいので、必ずしも自分より下の立場の人に強い態度をとるとは限りません。小さいグループを作って、そこで主導権を握ろうとします。

 

逆三角型の性格である決分性気質は、支配と服従の志向性を併せ持つ権威主義的気質です。決分性気質の権威主義的な性格を形作っているのは、力に執着する傾向が強いことです 。その為、権力を行使する人や組織を、力や強さと捉えます。社会の中で自分の強さを示す為に権力を欲します。権力に服従するので、立場や実力が自分より上の人には極端にへりくだり、指示を受けた場合は多少無理な依頼でも従います。そのかわり、自分の方が立場が上の場合は、自分の権力を行使します。立場が下の人には高圧的な態度をとり、時には無茶な命令を出すこともあります。これは、上の立場の者は自分より偉いのだから命令するのが当然であり、立場が下の者は上の命令に全面的に従うのが当然であると思っているからです。このような、信念とも言える軍隊的体質の意識が根底にあります。

 

 

階級主義的気質

 

階級主義的気質とは、権威の階級にこだわる気質で、格付けを気にします。長身型の性格である情操性気質は、階級主義的な気質です。社会的な評価を気にするので、身だしなみに気をつけて清潔感が漂う装いをします。そして、大学に進学する人が多いようです。職業を選ぶ時には、一流企業に就職したがったり、知的な印象を受ける仕事など、社会的に認知されやすい職業を選択する傾向があります。経済的に余裕がある場合は、ファッションや調度品は一流品を好みます。

情操性気質には自分の品位を保とうとする性質があります。その性質が自己中心的な方向性に傾くと自惚れが強くなり、自己顕示性や一流意識が強い性格になります。こういうタイプは貴族的で、階級主義の傾向が強く現れます。自惚れが強いエリートに多く、高級な服装を好み、ハイソサエティーな生活を望みます。

 

 

反権威主義的気質

 

反権威主義的気質とは、権威に反発する傾向がある気質です。精悍型の性格である精神性気質は、反権威主義的な気質です。精神性気質に関しては、博愛主義的気質の項目で後述します。

 

 

非権威主義的気質

 

非権威主義的気質とは、権威も意に介さない傾向がある気質です。骨太型の性格である熱情性気質は、非権威主義的な気質です。熱情性気質に関しては、博愛主義的気質の項目で後述します。

 

 

博愛主義的気質

 

博愛主義的気質とは、博愛精神のある気質で、愛情深くて平等の精神をもっています。多くの人の為になる事や、人を助ける事を何かしたいと思っています。

権威に反発したり、権威も意に介さないような人には、博愛精神がある場合があります。それは気質で言うと、反権威主義的気質である精神性気質と、非権威主義的気質である熱情性気質の人のことで、性格に共通する部分があります。

 

精神性気質と熱情性気質は、博愛精神がある気質です。それに平等の精神があるので、上下や優劣の立場の違いで人間が区別されるのを好ましく思いません。その為、権威のある相手や組織に立場上従うことはあっても、気持ちのうえでは権威になびこうとしません。相手が目上の人でも目下の人でも、本質的には同等に感じています。環境や体験により個人差があるでしょうが、立場や年齢の上下に関わりなく、分け隔てしない接し方をする傾向があります。その為、社交的なところもありますが、たとえ悪気が無くとも、目上の人への礼儀の心配りが足りない場合があります。そして、筋の通っていないことが許せない正義感と頑固さがあります。立場が上の人や権威のある相手に対しても、間違っていると思えば批判します。逆に立場が弱い人には、放っておけずに助けようとする優しさがあります。

精神性気質と熱情性気質の人は、基本的には権力や名誉などの権威を得ることは特に望まない人が多い。しかしスポーツの場合は、負けたくないので優勝してナンバーワンになりたいと強く望むこともあります。

 

 

全体主義的気質

 

全体主義的気質とは、自分のことよりも全体の利益や安全を優先する気質です。真面目な性格で権威に従い、自分が属する組織や団体に貢献しようとします。

 

薄型の性格である神経性気質は、全体主義的な傾向があります。繊細で真面目な性格なので、常識やモラルを念頭に置いて組織や社会のルールに従います。ひんしゅくを買うのを恐れるので、人目を気にして個人や全体に迷惑をかけないようにします。知的な人が多く、権威を無批判に受け入れている訳ではなく、理性的な判断で権威に従っています。心の中では批判していたり組織に対して抵抗がある場合であっても、引っ込み思案な性格なので、不満を言えずに組織に従う場合もあります。

 

肉厚型の性格である秩序性気質は、全体主義的な傾向と権威主義的な傾向を併せ持っている気質です。権威のある人物や組織に服従しますが、厳密に言えば、秩序を守ることが本人にとってモラルなのです。規則や立場の序列など、秩序が守られている状態の組織や社会が、秩序性気質の人にとっての全体であり権威です。

組織の権威を守るには、組織の秩序を維持しなければなりません。その為には、規則を守ることが必要になります。自分が規則を守るだけでなく、他の人にも規則の厳守を求め、規則を破る者は許すことが出来ません。

立場の序列を維持することも、組織の権威を守ることに繋がります。その為、目上の人には丁寧すぎるくらい礼儀正しく接します。自分が上の立場になった時には、あくまで秩序を乱さないようにさせる為に、支配的な態度をとる場合があります。

 

 

世間主義的気質

 

世間主義的気質とは、世間を尊重し権威としている気質です。均整型の性格である協調性気質は、世間主義的な気質です。協調性があり、社会に順応出来る性格です。器用で要領が良く、世間に迷惑をかけるような事はあまりありません。ドライで計算高く、ひんしゅくを買わないように嫌われないように立ち回ります。社交的で人間関係も円満なので、世間の評判は良い。

通常は良心的で朗らかな性格なので、社会のモラルやルールに反したことや、人を傷つけるようなことはしたがりません。しかし、強いトラウマを持っていたり、ストレスが溜まるような状況になると、ストレスを発散する為に度を超した嫌がらせをしたり、世間にばれないように悪いことをする場合もあります。そういう状況が慢性的になると、表面的には朗らかで社交的だが、内面に強い悪意を隠し持っている、二面性のある性格になります。