他人格症候群

他人格症候群の感覚

 

他人格とは、心や頭の中に感じる、自分以外の人格のような意識です。他人格を頻繁に感じている状態のことを、他人格症候群と言います。

 

他人格症候群は、他人格を主に幻聴というかたちで認識します。この場合、声のように聞こえなくても、言葉を感じる感覚も含まれます。幻聴が聞こえても、心や頭の中に自分以外の人格的な意識を感じていない場合は、他人格症候群ではありません。
他人格症候群の感覚は、通常では自分の価値観や感情と捉えていることが、まるで自分以外の人格を持っているかのように感じる時があります。 他人格から話しかけられている感覚があり、考え事をしたり行動を起こそうとする時は、アドバイスや反対意見を言われることもあります。何か決断を下す時は、他人格と話し合いをする場合もあります。

意識の中に他人格が発生すると、本人にとっては不安やストレスを感じることもあるかもしれません。しかし、他人格が本人や周りの人に苦痛を与えるような不都合が無ければ、特に大きな問題はありません。他人格症候群の人の中には、他人格を感じている状況を、特別な事だと思っていない場合もあります。そういう人は、違和感を感じずに普通に暮らしています。

 


精神疾患との比較

 

基本的な考え方としては、DID(解離性同一性障害)は他人格症候群に含まれません。他人格症候群はDIDとは違って、別の人格に体を支配されるような人格交代が無く、記憶の解離もありません。DIDの複数存在する自己同一性は、症候群というよりも精神疾患の特徴であり、他人格症候群と分けて解釈しています。

 

DIDでは、精神に内在する本人以外の人格のことを、別人格や別の人格と表現されることが多いようです。他人格症候群の他人格は、上記の説明にあるとおり、DIDの別人格とは性質が違います。その為、混同を避けて別人格とは違う他人格と呼んでいます。


現在のDID治療は、患者が人格統合を選択しないで、人格の共存を選択することが多くなっているようです。 DIDの患者が、人格の共存を選択し治療が成功して、人格交代や記憶の解離が無くなった場合は、別人格の存在を心の中に自覚しているならば、そういう状態は他人格症候群になります。


統合失調症や神経症やその他の心因性の疾患が原因で、幻聴が聞こえる場合があります。この場合も症候群というより精神疾患の症状であり、他人格症候群と分けて解釈しています。

精神疾患を患っている人でも、疾患と幻聴との関連性が無く、他人格を頻繁に感じている場合は、他人格症候群と解釈してもいいと思います。


他人格を感じている感覚を通常は統合されている同一性の破綻と捉えれば、解離性症状の一種という解釈も出来ます。従来の精神障害の診断基準に当てはめれば、他人格症候群は特定不能の解離性障害に分類されるかもしれません。


他人格症候群の要因

他人格症候群の要因として考えられるものを、幾つか挙げてみました。
その一つは、多重的な傾向が強い人格にあると考えられます。(多重的な人格に関しては詳しくは多重的精神性の因子の項目をご覧下さい)多重的な意識と自問自答しているうちに、自分の価値観や感情が、まるで人格を持っているかのように感じてくるのではないかと思います。
その時々の必要性から、心の中に話し相手や心の支えとなるような相手を作り上げる可能性も考えられます。
理性によって感情や欲求を抑圧し、抑圧された心の声を普段の自分とは違う人格として捉える場合もあると思います。
人格を持っているかのような精神的存在を認識している時は、霊の声や存在を感じている可能性も考えられます。たとえ霊現象だとしても、自分の中に本人以外の人格的な意識を感じるならば、他人格症候群の範疇に入ります。

 


他人格症候群とは思われないケース

他人格を感じることが全く無く、自分の体の外側から声がする場合、または、自己の意識外で人格を持っているかのような精神的存在を認識している場合は、基本的な考え方としては、他人格症候群には含まれません。その場合は幻覚ということになりますが、単なる空耳や見間違いか、思い込みによる錯覚、現実と空想の区別がつかず想像力で幻覚を創っているか、霊的な存在を感じているか、脳に何らかの障害がある可能性も考えられます。