適応機制のポジティブ感情

 

 

適応機制

適応機制は、不安や葛藤や欲求不満などの不快な気持ちになった時に、ストレスに対して自我を適応させる為の心の仕組みです。適応機制は、フロイトの精神分析の研究を元に、その娘であるアンナが概念を整理して、フロイトの弟子であるメラニー・クラインがさらに発展させました。

 


楽観

適応機制に楽観というのを加えてもいいのではないかと、私は考えています。楽観とは、不安や欲求不満などのストレスを感じる時に、物事をポジティブに捉えて、自分を鼓舞したり精神を安定させようとする心理作用です。

 

 

軽視楽観

 

現実を軽視して解釈することで気持ちを軽くしようとすることを軽視楽観と言います。これは誰にでも起こりうる適応機制です。軽視楽観は、多くは厳しい現実に直面して衝撃を受けた直後に、反射的に起こる認知です。例えば「こんなの大したことはない」「これは何かの間違いだ」というような捉え方です。

 

 

前向き楽観

 

不安や欲求不満などのストレスを感じる時に、前向きに考えようとすることを前向き楽観と言います。例えば「そのうちいいことあるだろう」「今は大変な思いをしているがこの体験も無駄にはならない」「自分を成長させる為に神が試練を与えている」「逆境がないと人生面白くない」などの捉え方です。これは、頑張ったり苦労に耐えたりすることを美徳とする日本人が好む捉え方です。

 


楽観妄想

不安や欲求不満などのストレスを解消する為に、こうなったらいいなという状況を空想して不安や欲求を紛らわせるのは、誰しもが経験あるかもしれません。これを楽観妄想と言います。頻繁に妄想する人は、妄想することである程度満足するので、願望を実行に移す行動力が無い人が多い。

 


反復楽観


とても不安を感じるような状況だとしても、良い方に考えるイメージや言葉を繰り返すことによって、少しずつ安心出来たり元気が出てくることがあります。これを反復楽観と言います。例えば、絶望を感じるような精神状態だとしても、「大丈夫」という言葉を繰り返し自分に言い聞かせたり、良い方に考えることを繰り返せば、気持ちが楽になることがあります。これは、反復運動によって肉体を変化させるのに似ています。体が硬くても繰り返し柔軟運動をすれば体が柔らかくなったり、同じ動作を繰り返して少しずつ筋力が身に付くようにです。

 

不安を解消しようとして、計画的にポジティブなイメージトレーニングを繰り返した場合、不安を克服する為に合理的に考えて取り組んでいることになるので、これは適応機制の中にある合理的規制になります。

不安を解消しようとして、無意識的に良い方に考えるイメージや言葉を繰り返す場合は、ストレスに対して無意識的におこる心理作用なので、これは適応機制の中にある防衛機制になります。

 

しかし、言葉の意味は時が経過すると変わってくる場合があります。現在では、適応機制のことを防衛機制と呼ばれることが多くなってきているようです。適応機制の意味も、防衛機制と同じように、ストレスを克服する為に無意識的におこる心理作用と捉えられることもあります。

 


強迫楽観

不安や欲求不満などのストレスを感じる時に、楽観的な思考をしなければならないと思い込んでいる場合、これを強迫楽観と言います。人生がうまくいかないと感じている時に、自己啓発関連の本を読んだりする方もいると思います。自己啓発の考え方で『プラス思考になれば良い結果を引き寄せる』というのがあります。それで現状を変えようと思って、良い方に考えなければならないと思い込むことがあります。しかし、物事を良い方に捉えようとしても、思うようにプラス思考が出来ない場合もあります。特に普段マイナス思考をしている人は、悪い方に考えてしまう心の癖がついているので、そういう人がプラス思考になろうとするのは大変なことです。

 

不安を感じる時は、思い込みや想像で悪い方に現実を捉えている時もあります。無理に楽観的な思考をしようとしなくても、冷静になって客観的に状況を把握し、現実的な考え方や対応をするだけでも、心を落ち着かせることも出来ます。