多重人格にみられる人格と傾向の分類

多重人格には、自我を持った意識(このホームページでは便宜上それを人格と呼びます)が複数認められますが、多重人格者の個人差に関係なく、人格には共通した特徴があります。以下の類型は、収集した多重人格に関しての情報を複合して、新たな解釈も加えて作成されています。ここでは多重人格にみられる人格の状態を、人格のタイプと傾向に分けて説明しています。意識内部で現れる特徴についても、分類の中に含まれています。

 


多重人格に多くみられる人格

基本人格
重大なストレスの体験を発端として、最初に別の人格が分離した後に生じる、多重人格の核となる人格。受身で控えめな性格の傾向がある。非活動的な状態になっている場合もあり、滅多に意識上に出現しなかったり、意識内部で長い間眠っていることもある。

基本人格に関しては、多重人格になる前の本来の状態の人格、という解釈が主流です。多重人格の人は、人格が複数存在する状態になる以前に、最初から多重的な傾向が強い人格の素質を持っているという仮説を私は立てました。(詳しくは多重的精神性の因子の項目をご覧下さい)多重的な人格の中心的な一部分が基本人格になると私は解釈しています。

 

主人格
その時々で最も多くの時間、体を支配している人格。DID(多重人格の病名である解離性同一性障害)の治療を求める人格はたいてい主人格。 典型的な主人格は、不安が強く、良心的であり、頭痛に悩まされている。

 

主人格や基本人格は、体を支配していない時の記憶がないケースが多い。交代人格達はお互いのことをある程度知っているが、DIDの治療が進んでいない状態であれば、主人格や基本人格は、自分以外の人格の存在を認めていないことが多い。

交代人格
(交代人格の捉え方は人によって様々なので一つの解釈として)

主人格と基本人格以外の人格交代出来る人格。

子供人格
多重人格に必ず存在する子供の人格。甘えられる状況の時に意識上に出現する場合が多い。子供人格は、過去のトラウマを抱えていて怖がったり泣いていたりするインナーチャイルドと、生き生きしていて無邪気なワンダーチャイルドがいる。(交流分析理論の応用)


異性人格
肉体と性別が異なる人格を指す。女性の男性人格は保護する役割が多い。男性の女性人格は体を支配することが少なく、主に意識内部で活動する。女性人格でも自分のことを男性と認識しているケースもあり、男女の要素を併せ持つ人格は異性人格と判断する。中性のような性別の人格や性別がない人格の存在もあり、その場合も分類上は異性人格になる。


見守り人格
良心が具現化したような人格。まるで教師のように、質問に答えたり、他の人格が適切に生きていけるように見守っている。しかし、他の人格の行動を強制的に止めたり変えたりは出来ない。DID治療に協力することもある。理性的だが感情の起伏が乏しい。

記録人格
生活に関するおおむね完全な記憶をもっている。質問すれば、過去の出来事や他の人格の行動についての情報を与えてくれる場合もある。記録人格が複数のケースでは、一部の記憶だけを管理している人格もいる。

統括人格
人格達を統括する立場の人格。統括人格が複数のケースでは、状況に合わせて別の人格が統括したり、一部の人格だけをまとめている人格もいる。しっかりしていて、冷静に状況を判断出来る。


保安人格

意識内部で、人格システム維持の為の任務を請け負う。意識内部の領域を守る、問題をおこす人格に対して監視したり行動を抑制したり活動を停止させる、その他の意識内部の管理など。

 

犠牲人格
辛い体験に関することを代わりに受けて犠牲になる。虐待された時に意識上に出現したり、体を支配している人格が心身にダメージを受ける時に交代する。または、深刻なトラウマに関する記憶や感情を受け持つ。犠牲人格が人格全体の犠牲となって存在するおかげで、他の人格は辛い記憶を持たずに生きていける。

 

 

その他の特殊な人格状態


人格断片

人格としての形成が未発達で、人格の断片のような意識。感情反応や出来る事が限定的で、一つの情動による感情表現をしたり、決まった行動をする機能を持っている。次々と数が増えていって、人格断片が数多く内在している多重人格者もいる。

人外人格
人間以外の生命体を象徴する人格状態全般を指す。ペットになるような哺乳類の動物が主で、特に猫人格が多い。半人半獣や生物の形態をなしていないなどの現実には有り得ないものもいる。大体は人間の言葉を理解し喋ることが出来るが、動物の場合は動物の仕草をしたり鳴き声を出す時もある。

憑依人格
憑依して人格交代する霊的存在による人格状態。憑依霊が意識上に出現したら憑依人格になるが、たとえ霊が憑いていたとしても、人格交代して体を支配しなければ憑依人格ではない。

 


多重人格の代表的な障害や役割や性質などの傾向


依存症の特徴がある人格の傾向

 

嗜癖傾向
食べ物、薬物、アルコール、煙草など、物質の摂取を病的に求める。
嗜癖とは、物質使用を繰り返して使用量が増加し、使用に対する押さえがたい衝動が高まり、使用できない状態となると身体的、精神的悪化に至る状態。


浪費傾向
浪費癖があり、お金やクレジットカードを使いすぎてしまう。頻繁に衝動買いをする場合は、買い物依存症の傾向がある。

性的傾向
性衝動を行動に移す傾向が強い。売春や性的な仕事をする、性的に奔放でセックスに依存している、性行為を通して自分を受け入れてもらおうとするなど。

自傷傾向
自傷行為など自己破壊的な行動を繰り返す。情緒不安定で自殺願望を抱えていることが多い。
自傷は自分の体を切って傷つけるだけでなく、自分の身体を故意に害する行為全般を指す。自傷行為は必ずしも自殺企図によるものではなく、不安やストレスを一時的に軽減させる為に行い、常習化する傾向がある。

トラウマの影響が行動や症状として現れる人格の傾向

他害傾向
日常的に怒りを感じていて、憎しみの感情を発散する。他の人格に対して、自殺をそそのかしたり、中傷めいた言葉を発する。他の人格を攻撃する目的で、生活を妨害したり、社会での人間関係を壊そうする。多重人格者に危害を加えた人が、そのまま他害傾向のある人格となって現れることもある。悪意があまり強くない人格もいて、他の人格を多少虐めたり、悪ふざけを好んで困らせる。

パニック傾向
情緒不安定でパニックを引き起こす。パニック発作に伴って、めまい、動悸、手足のしびれ、吐き気、息苦しさなどが出てくる時がある。

癇癪傾向
イライラしたり、怒りによって暴れる。短気で喧嘩早かったり、ヒステリックになり大声を出す。まわりの人や物を叩く、蹴る、投げるなどして傷つけてしまうこともある。

虚脱傾向
元気がない状態になる。抑鬱状態や空虚感などを感じる精神状態で、ぼーっとして長い時間を過ごすこともある。自分の殻に閉じこもって、コミュニケーションの障害が出てくる場合もある。

 

自殺傾向

自殺企図の動機により自殺を試みる。特に自傷行為や薬物の過剰摂取が多い。


一部の人格を助ける役割がある人格の傾向
(上に示した見守り人格、統括人格、保安人格などの人格全体の為に働いている人格の傾向は別に解釈する)

 

社交傾向

人間関係を円滑にする役割がある。おしゃべりで明るい性格。人に好かれたい願望が強く、八方美人になってしまう。色んなタイプの人と仲良く出来るが、気を遣いすぎて精神的に疲れることもある。


保護傾向
特定の人格を保護する役割を持つ。人格を守ろうとする気持ちが強いため攻撃的になる時がある。または子供人格の世話をするなど、他の人格の面倒をみる保護者のような役割も含まれる。

癒やし傾向
意識内部で人格を癒やす役割を持つ。人格を励ましたり慰めたりして、精神的な支えになる。または医療関係者やカウンセラーやペットであったりする。苦しみを取り除いたり癒やしを与えられる特殊な能力を持っている場合もある。

実務傾向
主人格の代わりに、仕事や生活に関することをこなす。職場に出て働いたり、家事などの日常生活の手助けをする。

 

処理傾向

他の人格が問題行動を起こした時に、交代して後処理をする。たとえば、他の人格が自殺を試みた後に治療したり救急車を呼ぶ、約束や仕事をすっぽかした時に代わりに連絡をいれる、など。


補助傾向
メインに活躍する人格ではないが、補助的に協力する。他の人格の為に役目をお手伝いするような働きをしたり、相談にのって助言をしたり、頼まれればたまに協力するなど。

その他の特徴的な性質を持った人格の傾向

不随傾向
もともと肉体に障害がなくても、体が思うように機能しなくなる。体を動かしにくくなったり、目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなるなど。

能力傾向
優れた技能を持っている。意識内部で発現する人格に対して使われる特殊な力も能力に含まれる。

異言傾向
生活環境に関連性のない方言や外国語で話す。この場合、昔住んでいた地域の言葉の使い方は含まれない。日本の多重人格者には、関西弁を喋る人格がよくみられる。

睡眠傾向
やたらとよく眠る。意識内部で長い間眠り続けたり、または体を支配している時に沢山寝る。

 


上に示した人格のタイプと傾向は、性質が複合して人格として存在しています。例えば、浪費癖があり、たまに他の人格の役割を手伝って、意識内部で問題をおこす人格を監視する役割もある場合は、浪費傾向と補助傾向のある保安人格となります。関西に住んだことがなくて関西人でもないのに関西弁を喋り、主人格の代わりに仕事や生活に関することをこなす人格だとすれば、異言傾向と実務傾向のある交代人格となります。