DIDの病前性格と思われる気質

 

 

DID(解離性同一性障害)の患者は、自我同一性が複数存在する人格の状態になる以前に、最初から多重的な傾向が強い人格の素質を持っていると私は予想しています。多重的な性格、特に多重的な傾向が強い特性を先天的に持つ者が、小児期に過酷な虐待を反復的に受けた経験があると、DIDを発病することが多いのではないかと考えています。


実際に多重的な傾向が強い気質も存在します。それは、体型別性格類型の華奢型の項目にある情緒性気質のことです。情緒性気質にはDID患者との共通点が多くあるので、情緒性気質の性格傾向は、DIDの病前性格(特定の疾患にかかりやすい性格)と言えるのではないかと思います。

情緒性気質は多面性がある性格です。本来はシャイな性格ですが、ある時は物怖じせず堂々と話したり、ある時はハイテンションになって騒いだりします。様々な価値観や感性を持っていて、多重的な性質もあります。しかし、多様な感性が災いして、時には混乱して精神のバランスを崩してしまう場合もあります。ただし個人差があるので、内面は多重性が強くても、態度では多面性があまり表面に出ない人もいます。多面性と多重性の違いに関しては、詳しくは多重的精神性の因子の項目をご覧下さい。

DIDには多数の人格的な意識がありますが、人格傾向に一定のパターンがあります。子供の人格は必ず存在すると言われています。基本人格は受身的で控えめな性格の傾向があります。主人格は不安が強く良心的であることが多いようです。

情緒性気質は、シャイで内向的な性質があり、良心的な人が多い。そして、子供のように無邪気なところもあります。

 

DIDに見られる人格の傾向は、特定の感情や欲求や情緒不安を解消する役割が人格化しているように思えます。DIDの人格の中には、依存症の特徴がある人格が存在する場合もあります。例えば、積極的に性交渉を持とうとしたり、頻繁に衝動買いをしたり、薬物を過剰摂取したり、過食になったりする人格や、悲観的で自傷行為をする人格などです。
情緒性気質は、感傷的で自虐的な面があったり、衝動買いをよくしたり、大食漢の人もいます。デリケートで人や環境の影響を受けやすく、情緒不安定になってしまうことがあります。中には、情緒不安を一時的に解消する為に、酒や性欲や薬物に溺れてしまう人もいます。

 

DIDの患者は、絵やイラストを描いたり、音楽活動をしているなど、芸術的な才能を持っている方が多いようです。DIDの患者には多数の人格が存在するので、そのうちの一つの人格がたまたま芸術的なタイプなのではないかという捉え方も出来ます。しかし、ある一定の嗜好性や才能を持っている人格が共通して存在するというのも、DIDにみられる人格の特徴と言えると思います。

情緒性気質には芸術的な才能があり、何かしらアートの創作をしている人が多い。

DID患者は、特にサービス業などの人と接する職業を選択する傾向があります。性格が異なる多数の人格の存在やDID患者の個人差に関わらず、職業の選択に一貫した志向性があるのは、DIDになりやすい人の性格傾向に原因があることも考えられます。DIDになりやすい素質を持つ者の人間性は、根本的に人に優しくしたり尽すことを好むので、自然に人と接する職業を選ぶのではないかと予想しています。
情緒性気質には博愛主義的な愛情があり、奉仕することを好みます。

性格だけではなく、情緒性気質の体型である華奢型の風貌は、DIDとの共通点があります。
DID患者の中には膨よかな体型の方もいますが、統計的には太っている人が少ないと言われています。華奢型はスレンダーな体付きをしています。
そしてDIDは、有色人種より白人に多いとされています。華奢型の風貌は、色白で端正な顔付きをしている人が多く、中には白人とのハーフかクォーターではないかと思えるような人もいます。

二重人格や多重人格では、霊の憑依による人格状態が存在するケースもあるようです。情緒性気質は霊感が強い人が多く、中には霊に憑依されやすい霊媒体質の人もいます。

DIDの場合に限らず、たとえ重い精神疾患を患っていた人であっても、気質の性格傾向は変わらずに残っていると思います。その為、情緒性気質の性格傾向がDIDの病前性格と言えるかどうかを確かめるには、統合治療が成功して一つになった人格に、情緒性気質の性格傾向の特徴が多く当てはまり、そのような人達が多く確認出来れば、それを証明したことになるという解釈も出来ます。しかし現在では、DIDの治療は患者が人格統合を選択しないで、人格の共存を選択することが多くなっているようです。